・TemuとSheinがメキシコに総額8億ドル以上を投じ、米国国境付近に大規模な物流拠点を2026年半ばまでに確立する。
・新拠点の活用により、米国向け配送時間を従来の10~12日から72時間以内へと劇的に短縮し、米国市場の攻略を加速させる。
・USMCAの枠組みや配送の効率化を背景に、米国の規制や関税を回避しつつ、現地の小売機能としての存在感を強めている。
背景
近年の越境EC市場において、中国発のメガプラットフォーマーTemuとSheinは、圧倒的な価格優位性と物流スピードで世界の流通を席巻してきました。
しかし、その急速な拡大は必然的に各国の規制当局との摩擦を招いています。
米国では特に少額輸入免税制度の悪用に対する懸念が高まり、関税や規制の強化が現実味を帯びています。
こうした逆風の中、彼らが導き出した答えが、メキシコを拠点とした物流の再構築、いわゆる近接物流(ニアショアリング)への大転換です。
彼らはもはや広州から個別に発送するだけのプレイヤーではありません。
北米市場を内側から支配する統合型小売業者へと、その姿を変えようとしています。
現状分析
両社が発表した合計8億ドル規模の投資は、単なる倉庫建設以上の意味を持ちます。
具体的には、メキシコ・モンテレーに50万平方フィート超の拠点を確保し、地元の物流企業Estafetaとの提携も強化しています。
これにより、バルク輸送でメキシコへ運び、そこから最短距離で米国顧客へ届けるサプライチェーンが完成します。
このモデルの恐ろしい点は、米国の保護貿易政策が網をかけている「国境」という物理的制約を、物流のハブ化によって事実上無効化していることです。
現地雇用を3,000名創出し、米国市場における「物流のラストワンマイル」を掌握することで、ライバルであるMercadoLibreら既存勢力も自動化投資を急がざるを得ないほど競争が激化しています。
日本市場への示唆・次なる一手
今回の事象は、物流の場所が消費地に近いほど勝率が高まるという、グローバルECの教訓を改めて証明しました。
日本企業が今後、アジア圏や欧米市場で対抗するためには、単なる低価格競争ではなく、現地を巻き込んだインフラ構築が不可欠です。
結論として、今後の越境ECは「どこから送るか」ではなく「どこに在庫を配置し、現地の商習慣にいかに溶け込むか」が勝敗を分けます。
特に地政学的なリスク管理と、物流の近接化をセットで考える戦略眼が、経営層には強く求められています。
この激動の物流変革期において、日本のプレイヤーも自社のサプライチェーンを見直す絶好の機会が訪れていると言えるでしょう。
出典元: TechCrunch


